木々のささやき 345号

未熟さを改める(2)

 最近の世の中の荒みを憂えているのは、私一人だけではないように思います。例えば、親の子供に対する虐待問題。吾が子を死に至らしめる最悪のケースも報じられています。また、”8050”問題も社会的問題としてクローズアップされています。80才代の親が50才代の引きこもりの子供の面倒を見るという問題です。さらに自動車のあおり運転では相手に危険と不快さを与え、多くの人に不安を与えてしまっている問題。常態化した、いじめの問題等々。

 こうした問題に対して、政府はじめ自治体においては解決に向かうべく、対策をいろいろ講じていますが、なかなかこれらの問題は後を絶たずくり返されています。

 このような問題の原因はどこにあるのかを正しく把握し、根本的対策を打っていく必要を感じています。原因の一つに人間関係能力の欠如があるように思います。周囲の人との人間関係がうまくいかない。充分なコミュニケーションをとることができない。つまり人の話を素直に受け入れることができず、同時に自分の思いや考えを正しく伝える事ができない。また先入観で物事を判断してしまう。その結果、自分の思い通りに事がはこばないことに腹を立て、子どもの虐待や弱い人をいじめるということで自分の思いを通していこうとしています。

 また、社会の規範やルールが守れず自分勝手に、自分の思いだけを優先させてあおり運転をくり返しています。つまり、未熟な性格、わがままな性格がこうしたさまざまな問題の根底にあると思っています。

 こうした未熟な性格、わがままな性格を私たち一人ひとりが意識して自ら正していかない限りこうした問題解決にはいたらないでしょう。その場限りの対症療法だけに止まらず、時間がかかっても根本治療にも取り組む必要があると思っています。

 素心学(池田繁美先生)では、思いやりのある人間になることを目的にしています。つまり、人に不快さを与えない。安心と喜びを与えることのできる人間になることです。自分のわがままな心を排し、我を通すのではなく、周囲の人と調和し、魅力的で人から好かれる人間になることです。具体的には”社会人としての日常の心がけ”を実践する(思いやりの行動を実践し続けることで自分を躾けていく。)”謙虚さのなくなる兆候14項目”で、自分が謙虚さを失っていないかを振り返る。また、”二十の徳目”を意識して、身につけていくことです。こうしたことに丁寧にかつ継続して取り組んでいくことでわがままな性格、未熟な性格は次第に正されていきます。一人ひとりがそれらを実践することで思いやりのある、潤いのある世の中となることでしょう。

 

2019年10月 345号より 芳野 栄