木々のささやき 336号

感謝の気持ちを育てる

 思いやりの気持ちをなかなか思うように与えることができないのは、「自分は恩恵を受けている」という気持ちが足りないからではないでしょうか。感謝の気持ちが育ってくるとおのずと思いやりの気持ちが根づいてくるものです。(池田繁美先生)

 

 上の文章が私の心に深く入り込んできました。私の半生そのままを言いあてているようでした。

 私は家族はじめ多くの社員やお客様、友人などからこれまでに多くの恩恵を受けながら、「いま、ここ」に存在しているはずなのに、それを「思いやり」という形でそれらの人々に与えてきただろうかと振り返ってみると、不充分であったのではないかと思われます。上に述べられている通り、「自分は恩恵を受けている」という気持ちが足りなかったからでしょう。つまり私の心の中に「感謝の気持ち」が充分に育っていなかったのだと反省しています。「”あの人”から受けた言葉がうれしい、感謝したい」「”あの人”がこのようなことをしてくれたことがうれしい、感謝したい」という気持ちが昂じてくれば、今度はこちらから”あの人”に何かしてあげたい、”あの人”を喜ばせたいという思いがわいてくるはずです。この気持ちが「思いやり」だと思います。”謙虚さがなくなる兆候”の14番目に「ありがとうの言葉が少なくなる(感謝がなくなる)」という項目がありますが、謙虚さが欠けてくると「自分が、自分が」という過剰に働いた自我意識が心を支配し、自分一人でやっていると考えたり、人が自分にやってくれているのが当たり前だと思い、なかなか「自分は恩恵を受けている」とは考えられなくなります。

 

 自分が受けた恩をひとりじめにするのではなく、今度は「思いやり」として周囲に与えていくことが必要です。(池田繁美先生)

 

 先にも述べましたように、私の人生においてこれまで多くの人々から多くの恩恵を受けていることに気づきました。しかし、これまではそれらの多くの恩恵になかなか気づくことなく、一方的に享受してきたように思います。その反省の上に立って、これからは周囲の人々からの一つ一つの言葉や行動に対して心を動かし、「ありがたいことだ」「ありがとうございます」という気持ちで受け止め、それらに対して「思いやり」として与えていくことができるようになりたいと思います。

 感謝の気持ちを丁寧に育ててまいります。

 

 

2019年1月 336号より 芳野 栄