木々のささやき 295号

「地域のお客様と遊ぶ」

 六月今年度第一回目のパン教室を開催いたしました。五十名近い応募の中から十名のお客様を抽選で選び、さらに木輪のスタッフの中で日頃からパン生地に触れることのない販売員も加わって総勢十五名でおこないました。

 今回のテーマは、「福岡県産小麦を使った食パン」。家庭でもできるように手ごねによるパン造り。講師である木輪のスタッフがパン造りの基本を話したあと、手ごねによる生地づくりがはじまりました。イースト、塩、砂糖などの副資材と水を混ぜ、麺台に打ちつけながらパン生地をつくっていきます。あちらこちらから「バーン」「バーン」と生地を麺台に打ちつける音が大きくなってきます。次第に、生地がなめらかになり、食パンとしての生地ができ上がってきます。皆の表情も次第にやわらかくなっていきます。生地が一次発酵している間に講師が次の工程の説明やつくる上でのポイントを解説しながら、進められます。はじめは、口数の少なかったお客様同士の会話も次第に緊張がほぐれるにつれて多くなり、生地を麺台に打ちつけながら、笑顔があふれ、とてもいい雰囲気が漂いはじめていました。ふっくら膨んだパン生地に触れて、喜びの表情とともにやさしい表情に変化しています。そうした表情を見る私も幸せをいただきました。

 形をととのえたあと、二次発酵、焼成時間を利用して、あらかじめ焼成していた四、五種類のパンと軽い付けあわせを口にしながらの談笑がはじまりました。用意させていただいたパンの中には、八月中旬以降に店頭に並ぶ予定のパン(先のカリフォルニアレーズン新製品開発コンテストで特別賞を受賞したパン)も並べられ、二ヶ月程早く、参加していただいたお客様に、ご試食いただきました。それぞれのパンが焼き上がると大きな歓声があがりました。自分で生地をこね、成形したものは、当然のように愛着がわきます。

 今回のパン教室で、お客様との距離が、グッと縮まりました。地域のお客様を大切にするということは、こうしたことだと自覚できました。また、パン造りには、時間も手間もかかり大変ではあるが、つくる人はもちろん、それを食べる人に幸せをもたらすことができることを感じていただいたのではないかと思われます。

 私達のたずさわっている仕事が、世の中の役に立っているという誇りと、周囲の人を幸せにしていく魅力があるということをお手伝いしていただいた、スタッフにも伝わったのではないかと思います。

 第二回目のパン教室が八月十六日(日)に開催されます。お客様とどのような出逢いがあり、どのような喜びがあるか、たのしみです。このイベントに参加されたお客様、並び木輪のスタッフに感謝です。

 

2015年8月 第295号より 芳野 栄