私の自宅デスクの前には額に飾られた1枚の詩があります。
うつくしいものを美しいと思えるあなたのこころがうつくしい みつを
この詩を見るたびに「私の心は今の季節を、自然を、私に与えられた環境を、味わえているだろうか」と考えさせられます。ごく当たり前の日常に心を向け「うつくしい」と感じとれる心になりたいと思いました。
先日、約2年間(全19回)続いた木輪パン教室の卒業発表会が行われました。令和5年6月、店頭にて募集したパン教室の企画に、抽選によってお集まりいただいた6名のメンバー(6名ともお子様のいらっしゃる主婦でした)とのパン造りを通した交流が始まりました。今回はこれまでと異なり、パンに合う料理実演を兼ねたパン教室を行いました。開始から1年半は私が講師としてパン造りとそのパンに合わせた料理づくり、食べ方提案を行いました。残り半年はメンバーが2人一組となり、オリジナルパンの作成とその食べ方提案に挑戦し、試作を繰り返して、このたびの3月の卒業発表会に至りました。当日は、材料の計量からスタートし、パン生地を捏ね、発酵を取るといった一連の作業が今までよりスムーズに進んでいることにこの2年間の成果が見受けられました。6名はとても仲良く、会話は尽きませんが、真剣に生地や料理の製作に打ち込む姿がとても嬉しく思いました。そうしてあっという間に、パンと料理は出来上がり、完成発表会の飾り付けに入ります。コンセプトなどPowerPointを使った説明資料を持参する方もいらっしゃいました。その本気モードがそれまでの和気藹々の雰囲気から緊張感のモードに変えていきます。各チーム5分程度のプレゼンの後、質疑応答、私からの総評、そして試食という流れです。どのチームもすばらしいプレゼンテーションでした。私が期待していた以上の発表会でした。その発表の中でも感動したエピソードをひとつご紹介します。
あるチームが11月の試作でイーストを入れ忘れて、気づくのが遅く、作り直す時間がないというアクシデントがありました。生地は当然膨らみませんが、「最後まで焼かせてください」という強い要望があり、火は通りにくい(半焼けにしかなりません)環境で焼き、持ち帰り全て食べきったそうです。汗かきパン生地を捏ねていると生地に愛情が湧いてきて、とても捨てる気持ちにはなれなかったそうです。自分の子供を育てているような感覚で「出来のよしあしではない」と言われていました。そのパン造りに対する真摯な思いに、私はグッと感極まりました。
この2年間、6名との出会いにより、様々な刺激をいただき、またこちらが良い勉強をさせていただいた充実したパン教室となりました。これからも私はパン造りを通してさらに多くの方々を喜ばせることができるよう努めていきたいと思います。本当にありがとうございました。