店頭に陳列された商品が、私の想いをお客様に語りかけてくれることをイメージしてつけたのが、本紙のタイトル”木々のささやき”です。したがって店頭に陳列される商品には、私の心が入っていなければいけないと思っています。
私がパン造りをする場合、次のようなことに気を付けています。
①まごころを込めた仕事をする
②丁寧な考え方や、丁寧な行動をする
③美しく、きれいな商品をつくり込む
④少しでも速く商品をお届けする
です。
”仕事はまごころ込めて、丁寧に正確に、そして速く”
これを行動指針の一つとしています。この中で私が特に注目しているのは、”まごころを込めた仕事をする”ということです。
私の修業時代、師匠からよく言われたのが「技術や技能が今一つでも、心を込めてパンを造るという気持ちは誰にも負けないように」という言葉です。二年で修業を終え独立開業した私は、心を込めてパン造りに励むこと以外に生きる道はないと決め、日々取り組んできました。不思議と「おいしくなれ、おいしくなれ」と心を込めて造った時のパンと、何か考えごとをしながら造った時のパンとは明らかに商品に違いができることも体験しました。
”まごころを込める”の「まごころ」とは「思いやりの心」だと思っています。お客様に思いやりの心を込めて、一所懸命に商品をつくっていくことを大切にしてきました。「商品の向こうにお客様の喜ぶ顔あり」を意識しながら取り組むことで商品レベルが次第に上がってきたように思います。
”まごころを込めた仕事をする”ということをこれからも仕事の基本に置き、お客様に私の想いを語りかけることのできるパン造りに励みたいと考えています。
2018年4月 327号より 芳野 栄