木輪では、毎月二十五日に全社員から「社会人としての日常の心がけ」に取り組んだ報告書が提出されます。この取り組を通して毎月私の考え方や行動のいたらないところに気づかされています。私にとって大きな学びとなっています。今月も多くの学びがありました。二つの例をご紹介いたします。
ある社員から次のような報告がありました。「脱いだハキモノはきちんとそろえる」という項目を実践して『脱ぐときそろえていてももう一度整えなおすようにしています。そのことで心もととのえることができます。また整えたあともう一度振り返って見ます。少し離れた所からでも「美しく」見えるかを見ています。・・・・・そろえたあとの姿を見ても気持ちよく感じます。・・・・・ハキモノに一日ありがとうという心を持って大切にしていきたいと思います。・・・』
報告書を書いた社員の心がとても穏やかでととのっているのが伝わってきます。ハキモノをそろえることが心を調えることであり、心が調うことがいかに幸せを実感できるかということがわかりました。私も脱いだハキモノをそろえるだけでなく、振り返ってみて、その美しさを確認するところまで実践いたします。
もう一人の社員から次のような報告がありました。「和やかな気持ちで相手に応対」という項目を実践しての報告です。『新入社員を迎えるにあたり、自分も初心に返りスタートした四月でしたが、仕事中にイライラしてしまうことが多かったようです。・・・・・自分が皆をまとめ、動かさなければと思い、よりうまく仕事がまわるように、また働きやすい環境をつくり出すようにと考え、皆に協力してもらいたいことを求め、協力してくれることを期待してしまいました。そして、それができないと、イライラしてしまっていたようです。皆のことをもっとよく知り、それを受け入れ、多くを求めすぎないことが大切と学びました。』
責任ある立場になればなるほど、また責任感がつよく、その責任を果たそうと真剣に取り組めば取り組むほどこうした悩みや苦しみが発生してきます。私も同じような悩みを長い間味わってきましたが、この社員のすばらしいところは、自分の欠けているところにすぐに気づき「皆のことをもっとよく知ろう」、「求めすぎてはいけない」と自分のとるべき行動をすぐに改めたところです。私の場合、自分のいたらなさに気づかず、原因を外に求め続けた結果、ずいぶん長い間、悩み続けました。心が固く、自我の強かったことが原因でした。謙虚で心のやわらかいことの大切さを再確認できた事例でした。
このように社員からの「社会人としての日常の心がけ」の実践報告から多くことを学び、自分の欠けているところに気づかされ、そこを正すことができています。また実践に対する私のコメントを書くことで、コミュニケーションもはかれ、私と社員の成長につながっています。社員の皆様、ありがとうございます。
2015年5月 第292号より 芳野 栄