思い上がりを戒めよう

 7月は「文月(ふみづき)」と言われます。古くは、書物のことを「文(ふみ)」といい、「七夕」の行事に書物を開いて夜気にさらし、梶の葉に和歌をしたためてお祀りする風習から「文披月(ふみひらきづき)」が転じて「文月」と言われるようになったそうです。そろそろ暑さも本格的になってまいります。どうぞご自愛くださいませ。 

 何事においても最初は謙虚であるものです。会社に入社した頃は、先輩、上司から作業を教わることがたくさんあり、覚えるのに必死になります。また、その環境が目新しく、作業そのものや職場について「なぜ?」という疑問もたくさんわいてきます。ところが時が経ち、職場に慣れてきますと、先輩から教わった作業ができるようになり自信がついてきます。それまでの経験が全てだと思い、他人からのアドバイスが耳に入ってこなくなります。その作業をすることが当たり前のようになってきて、何も疑問を持たなくなり、変化に気づきにくくなってきます。そして、与えられた「作業」をすることで満足し、自ら発想し、工夫改善する「仕事」へとレベルアップする思いが薄れてきます。 また、お客様や会社から「いただいている」仕事を自分が「やっている」仕事だと錯覚してきます。そういった「当たり前」「やっている」という驕りによって日々の変化に気づきにくくなり、 工夫や改善ができなくなってくるという状況になっていきます。当然ながら、人間的にも技術的にもそれ以上の成長にブレーキがかかっていくことでしょう。 私が半導体の営業マンとして入社し1,2年目の頃は上司から毎日のように厳しく指導いただいていました。3年目の頃から、社内の人間関係やお客様との関係ができてくると仕事が順調に運び、大口の顧客を任されるようになりました。上司からも指導されることが少なくなり、「仕事ができている」「売上があがっているのは自分の実力だ」と錯覚しだしたのです。4年目に入り、同期で一番早く昇進のチャンスがやってきました。役員面談で私は自分の成果を存分に発表しました。ところが、その面談の最後にある役員から「あなたの面談の態度は横柄ですね。」と言われてしまいました。 今になって振り返ると、謙虚さに欠けた面談の態度に私のそれまでの仕事に打ち込む姿勢が表れていたのだと思います。お客様との関係ができているのは諸先輩方が築き上げた会社という信用の土台があったからであります。「キーマン」として関係が良くなった人ばかり訪問し、新規顧客訪問などの新規開拓ができておりませんでした。また、新規需要に目を向けることや、先々の業界動向に疎く、現在の刈取り(売上)ばかりに目がいっていたことなど、未熟なところばかりです。 人間的にも営業としての技術的にも半人前でしたが、当時の私は役員面談で指摘されるまで気付きませんでした。

 これらの経験を通して、今後会社の社長として人間的にも技術的にも、現状に甘んずることなく、常に工夫と改善を心がけ、謙虚に学ぶ姿勢を持ち続けていこうと思います。