“ルヴァンの声”とは(1)

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は、ひとかたならぬご愛顧賜りましてありがとうございました。本年も皆様のお役に立つ店、必要とされる店、愛される店になれるようスタッフ一同、力を合わせていきたいと思います。どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。

 今月はタイトルにもなっています“ルヴァンの声”についてお話しさせていただきます。ルヴァン(仏語:levain)はフランス語で“発酵(はっこう)種(だね)”という意味で、主に小麦粉、ライ麦粉、水を合わせて作った発酵種で、乳酸菌と酵母を生育させて作られるパン種のことです。

フランスでは自然界に存在する野生酵母を育てた種によって作られる伝統的な製法によるパンを総称するそうです。

 現在は、パンを膨らませるパン酵母は“イースト”と呼び、発酵の専門家が育てて製品化され流通しておりますが、イーストが工業的に大量生産できなかった時代は、ルヴァンのように小麦や果実に付着した野生酵母を育てて、種としてパンを膨らませていました。一昔前、小麦や果実から育てた酵母を“天然酵母”と呼び、イーストは体に悪いとウワサされた時期もありました。ところが、これらは今“パン酵母”と総称されています。パンを膨らます正体は今も昔も一緒であり、自然界に存在するパン酵母を小麦や果実から自分で育てるか、工業的に発酵の専門家が育てるかの差であり、人体への影響は変わらないというのが実態のようです。では、このパン酵母はイーストを使用しても、自家培養の酵母種を使用しても同じ味になるのかという話になりますが、同じ味にはなりません。酵母そのものは変わらずとも育った環境によって味や風味、パン生地にしたときの食感が異なります。イーストを使用すると安定したパン造りができます。そして、発酵力がしっかり安定しているため、ふんわり膨らんだ比較的ボリュームのある軽い食感のパンができます。パン生地を膨らませることに関しては優等生の集まりがイーストの特徴です。次に、ルヴァンも含めた自家培養の酵母種はパン生地を膨らませるのが得意なものもあれば、様々な香りや味のもととなるガスをだすものもいるので多種多様な集まりです。イーストに比べるとボリュームはでにくいのでずっしりと重い食感になりがちです。ただし、香りや味は個性がありおもしろい出来上がりになるのが特徴です。

 木輪では、軽く口どけのよい食感となるイースト、風味や香りが豊かな自家培養の酵母種(ルヴァン種、ライサワー種、レーズン種など)とそれぞれの特徴を生かしたおいしいパンができるよう工夫しております。商品ごとの詳細は店頭にてスタッフにお声がけいただければお答えいたします。次月号では「“ルヴァンの声”とは?」ということについて触れてみたいと思います。