私の誕生月には、これまでに両親から受けた恩を思い返すことで、両親への恩返しと供養としたいと思っています。
今月は、父から受けた教えについて思い返してみました。父はとても厳格な人でした。子ども心にきびしく怖い存在でした。従って父の言葉をその時は何のことか分からないものの、しっかり胸に刻んできました。
父の教えの中で特に印象深いのが、「兄弟仲よく」でした。小学4年生の時、学校でちょっとした兄弟ゲンカをしてきびしくしかられました。その時の怖さからそれ以来「兄弟仲よく」の教えが守れるようになりました。次のようなこともありました。家が貧しかったこともあり、私と兄に同時に二つ物を買うことができないとき、「おもやいで使いなさい」と言われていました。お互いにわがまま言わず、譲り合うことの大切さを教えてくれました。おかげで現在も兄弟仲よく、お互いに自分の持っているものを譲り合いながら、また助け合いながら生活できています。私たち二人にとって、「兄弟仲よく」の教えがとても大きな財産となっています。
印象的な教えの二番目は、「体を大切にする」ということです。私の長兄は、柔道をやっていたせいか、体が大きく健康にも自信を持っていた兄でした。そんな兄に対して言っていた父の言葉は、「たまたま、今日まではケガや病気もなく健康で過ごせたかもしれんけど、明日も健康であるという保証はどこにもない。もっと体を大事にせな」というものでした。まだ小学生だった私は、「健康って大切なんだ、無理してはダメなんだ」と思いました。親から譲り受けたこの体を傷つけることなく、元のままの形でお返しすることの大切さを教えていただきました。
次は「親、兄弟の生年月日や年齢は覚えておくように」ということです。ある本にも次のようなことが書かれていました。「親の年を知っておいて、長生きしてくれていることを喜ぶと同時に、老い先短いことを心配してあげることも親孝行です」と。現在両親の亡くなった日には忘れずに「父母恩重経」を唱えることで「○歳の時亡くなったが、生きていたら○歳だなぁと思い起こすようにしています。親兄弟の生年月日を覚えることが習い性となり、社員の生年月日も難なく覚えることができ、現役社員には、誕生日のお祝いハガキを書かせていただいていました。
遠く離れた子供の安否を、心配するのが親だということも教えられ、学生時代には、「親へのハガキ」を実践しました。50円(ハガキ代)でできる親孝行でした。
会社経営をするようになっても父からの教えが役に立っています。お金が自由でなかった父は長兄や次兄に「儲け三分に始末が七分」という話をよくしていました。いくら売っても始末倹約がないと儲け(利益)は出ないということです。始末倹約をよく言われました。そうしたことから会社経営にあたっては、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ買う」。そのことでものを大切に使い、不要な在庫を極力減らすことができました。
まだほかにも小さな教えがありますがこうした父からの教えのおかげで幸せな人生を送ることができています。父は私に、幸せに生きるための知恵をずっと与え続けてくれたものと感謝しています。「人生が幸せであったかどうかは、自分が息を引き取るまでわからんよ。その時、幸せな人生だったと思えることが一番の幸せたい」。この言葉が、これからの私の人生の
2020年9月 356号より 芳野 栄